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2013.05.20

父を見送って

 父が亡くなって約一か月。あっという間に日は過ぎる。
 過ぎていくし、実家に行けば遺影があり、祭壇があるし。父はいないので、本当に死んだのだなと思う。
 思うが、本当に死んだんだと。笑うような話しかけるような遺影を見るたびに「どうしてこんなに早く死んだんだ?」と怒りに似た気持ちもある。
 弟たちから見たら、母は父に支配されていたように見える節もあっただろうが、母は父を頼りに生きていた。その支えを失って、独り、時間を過ごしている。
 弟たちも母を邪険に思うことも煩わしく思うこともなく、彼らの誠心誠意で思いやり、心使いをしてくれている。それでも、独りを実感して、ままならぬ心を持て余している母がいる。
 月日が流れていくうちに、母自身も心も慣れてくれるのだろうし、いつかどこかの時点で、しっかり生きていかなければならないと思ってくれると思うが。

 父が2回目に自宅に帰ってきた時。ふと正気に戻った父は、自宅に帰ったのだから以前のように動けると信じたかったのか、動かない足を必死で動かそうとしたことがあった。
 足が動かないから、「足の上に置いてあるものをどかせろ!」「俺の脚に何を入れてあるんや?!」「こんな足で動けやへんのはカッコ悪いやろ!」と怒鳴るようにもがいていた。
 足が動かないことを突き付けられ、身に染みて実感させられたようだった。1時間くらいもがいた後、力尽きて泣き出した。
それから・・・死ぬまで泣いていた。
 
 

 父を自宅で看取ってあげたかった。それもあって、長い一時退院を決めてもらったようなものだった。
 けれども、母はそこまでの覚悟は持てなかった。と、いうよりその瞬間に立ち会いたくなかったのだろう。その瞬間が来ることが信じられず嫌だったのだろう。
 弟のお嫁さんは、親父と折り合いの合わない関係だったから、親父の看護は基本的にはしない、したくないと言っていた。その背景は母も私も弟も十分すぎるほど理解していたので、そのこと自体は何も思うことはない。看護はしたくないといいつつ、私や母や弟が中心となって世話をするときは、いろいろとアシストをしてくれた。体位交換やおむつ交換、着替えなども手伝ってくれたのだ。でも、お嫁さんも、その瞬間に立ち会うには不安がありすぎたのだろう。
 誤嚥性の肺炎を起こしているらしき父の容体が芳しくないとき、酸素を持ってこようかと言ってくれた訪問ドクターに母と二人で「それはできない」と言ったようだった。
 たぶん、弟も私も。自分たちのどちらかが24時間親父に付いていられたら、入院させず酸素を持ち込んで自宅で看取っただろう。弟も私がいるのなら、家で過ごさせたんだと思う。
 しかし、そうできない限り、そんな覚悟をお嫁さんにさせるのは忍びないと思ったんだと思う。母にそんな瞬間に一人で立ち会わせたくなかったに違いない。
 だから、こういう結果になってしまっても、だれを責めることもないし、弟と私が決断した「地元の病院に入院させる」ということも間違っていたとは思わない。
 入院に際しても、お嫁さんは初めての119番への電話をして救急車も呼んでくれた。その前に訪問ドクターに、入院に際する手続きや救急車を呼んで容体をどう説明したらよいかも、母に代わって聞いてくれて、実行してくれた。 入院するときもあれやこれやいろいろ荷物を運んでくれたり、頑張ってくれたと思う。

 それでも、そういうこととは全く別に、父を自宅で看取ってあげたかったといまだに思う。
 どうしても、その思いが手放せない。
 自宅に帰るたびに、うれしさとは反対の絶望も手にする父。再入院するたびに「これで生きて家に帰れない」という思いを持たせてしまう。そんな残酷な思いにこたえるのは、自分の精一杯で建て直したこの家で最期を迎えさせてあげることだと思っていたから。
 だから、「ごめんね」とそんな気持ちが心から離れない。
 今だって、私たちが決断したもろもろが間違っていたとは思わない。みんながそれぞれのベストを尽くして親父を看護し、見送ったんだと思っている。
 それでもなあ。「ごめんね」という気持ちが消せないなあ。
 時間とともに流れていくのだろうが…。

 親父、今、どこらへんかなあ。思うところにはもう挨拶に行けたかなあ。49日がすんだらちゃんとあの世に行くんだよ。
 もう、あの世には祖母と母を迎えて暮らす家もあるんでしょ。そこで母が逝くまで、庭の手入れをしていておくれ。芝生の植わった広い庭だったよ。

 いつか私も行く。同じ世界にね。その時には、先に逝った友達もいるに違いない。誰かがあの世へ行ってしまったときにいつも思う。その時まで、まあ、自分の精一杯で生きるよ。できることをできるときにできるだけやっていきたいと思う。
 
 

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